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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)286号 判決 1958年2月21日

主文

原判決を破棄する。

本件控訴を棄却する。

控訴費用及び上告費用は、被上告人の負担とする。

理由

原審の確定した事実によれば、被上告人が上告人武雄市の監査委員に選任されたのは昭和三〇年四月八日であつたというのであつて、佐賀県自転車振興会理事と武雄市の市会議員との兼職が許されるとする被上告人の主張を前提とすれば、被上告人は、地方自治法の一部を改正する法律(昭和三一年法律第一四七号)が施行された同年九月一日当時監査委員として在職していたこととなるので、被上告人の監査委員としての任期については、同法の施行後においても、なお、改正前の旧規定によるべきこととなる(同法附則第七項)。右旧規定第一九七条は、監査委員の任期は、学識経験者出身者であるか議員出身者であるかにかかわらず、すべて二年をもつて満了するものとし、ただ議員出身の監査委員に限つて、二年の任期満了前でも、議員の地位を失うときはそれと同時に監査委員としての地位をも失うべものとする趣旨であることは明らかである。しかし、同条第二項但書の規定により、議員出身の監査委員が二年の任期満了前に議員の地位を失つた場合、後任者が選任されるまでは第一項の任期二年を限度としてなお監査委員の職務を行い得べきことを定めたものであつて、議員出身の監査委員に限つて、第一項の二年の任期満了後においても、後任者が選任されるまでは監査委員としての職務を行い得べきことを定めたものではないと解すべきである。それ故、仮に被上告人の監査委員の選任が法律上有効であつたとしても、被上告人は、遅くとも昭和三二年四月七日の経過とともに、任期の満了により既に監査委員としての地位を失つたことは明らかである。されば被上告人が現に監査委員としての地位を有することの確認を求める本訴請求は、主張自体理由がないことに帰するので、これに反する結論をとる原判決は結局破棄を免れず、本件控訴は棄却さるべきものである。

よつて、民事訴訟法第四〇八条、第三八四条、第九六条、第八九条に則り主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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